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汝、その薔薇の名

4.誘拐


 室内に残ったアーノルは、その後姿を見送ると、力なく椅子に座り込んだ。
 これからエリーゼは館の裏にある庭へと行き、丹精込めた薔薇たちと戯れて、新しい苗を植えるのだ。その美しい顔に笑みを浮かべながら。
 その様子が、ありありと想像できる。アーノルは両手で顔を覆った。
 外からは、領民たちの声が聞こえてくる。しかし、室内は静まり返っていた。
 静寂を引き裂いたのは、皺枯れた声だった。
「随分と沈んでおるの」
 アーノルは、ゆっくりと顔を上げた。室内に作られている窓から、すうっと何かがやって来た。それはぼやけて曖昧だったが、だんだんと輪郭を持って現れた。
 黒いローブを被った老婆だった。
「キャサリン殿」
「なんですかなコルスタンの領主殿」
「フォルデ国王から書簡が届きました」
「ほっ、なるほど」
「驚かないのですね。知っていたのですか」
 顔を歪めてアーノルは老婆を睨んだ。
「ほっ、ほっ、ほっ。何を今更、ワシをなんじゃと思うておりました。あの子の星が輝きを増した、それが何を指しているか、一目瞭然、あの子は本来あるべき場所に戻るのじゃ」
「それこそ今更ではないですか! このままではいけないのですか? このまま平穏に、自由に、ここで生きていく事は出来ないのですか!」
 憤懣したように、顔を赤らめて叫ぶアーノルに、老婆はそれまで浮かべていた笑みを消した。
「それは驕慢というものですぞ領主殿」
 椅子を蹴り倒さんばかりに立ち上がろうとしていたアーノルに、老婆は手を向けて、その動きをとどめた。
「あの子の人生を領主殿が決める事は出来ない。それと同じように流れというものは、人の力では変えられぬ。あの子の転機が訪れようとしている。決めるのはあの子自身じゃ」
 諭すようなゆっくりとした声音に、いくばか落ち着いたのか、アーノルは深い溜息をついた。
「それは、分かっています。だが、貴女になら出来るはずだ。そうでしょう?」
 縋るような目つきだった。その熱い眼差しの中には「貴女ならその流れを変えられるはずだ」という強い確信が宿っていた。老婆はアーノルの心を読んだように頷いた。
「さよう、出来ますぞ。ワシは人との流れから外れた者ですからな」
 アーノルは身を乗り出したが、老婆はその先を言わせなかった。
「しかし、ワシは座視に徹します」
「あ、貴女はあの子が可愛くないのですか!」
 老婆は、片側の目を見開いた。
「可笑しなことを聞きなさる」
「あの子は貴女を慕っています。手放しても貴女はなんとも思わないのですか」
「ワシとてあの子が可愛くないわけではありませんぞ。然しながら、それとこれとは別物じゃ。あの子の運命は一度歪められておる、誰でもなく、このワシが歪めたが、あの時と今では状況が違うのでな。あの子の行く末はあの子自身が選ぶだろうて」
 ぶるぶると拳を握り締めるアーノルの様子に老婆は少しばかり哀れみの篭った視線を向けた。
「領主殿は、前国王の意思を尊重したいようですな」
「……ウィリアード一世陛下は、あの子の平穏をお望みでした。それだけを一心に願っておいででした。なのにどうして今更こんなことになるのでしょう」
「書簡にはなんて書いてあったのですかな」
「リチャード王子にご息女が存在したことが分かったと、何か知っていることがあれば知らせるようにとの事でした」
「やれやれ、何処で漏れたのやら、前国王は隠し切れなかったようですな。それを領主殿に諮問してくるあたり、現国王は侮り難いお人のようじゃ」
 否定はせずに、アーノルは口を噤んだ。
「ワシは細心の注意を払いましたぞ、それが前国王との契約でしたからな。森の外へはワシの許可がなければ出られないように暗示までかけて、しかし面白いもので、あの子はそれに気づいていたようじゃがね」
「気づいてた、ですと?」
 呆気に取られたように呟いたアーノルに老婆はからからと笑った。
「それだけではない。あの子は領主殿とワシが、知り合いだと薄々感づいておる。それでいて、素知らぬ振りをしておるのじゃ。面白い、実に面白い子じゃ」
「そんな……馬鹿なことが…」
「あの子は領主殿が思っているほど柔ではない、ということじゃ。前国王の心胆を大切にするのもよいが、深情けをもって見守ってやりなさい」
「………」
 言うだけ言うと、老婆の姿はあっという間に消失した。後に残されたアーノルは、何事か思ったように、深く考え込んだまま、従僕が声をかけるまで椅子から立ち上がりもしなかった。

 エリーゼは、少々落胆したまま館の裏までとぼとぼ歩いていった。
 アーノルは身近での唯一の常識人でもあるが、唯一の人間男性でもあった。その為、エリーゼにとって父性を感じさせる人であり、そんな人の助けになれない自分が情けなかったのだ。途中、領主の館に従事する人たちとすれ違い、挨拶を交わす合間にも何度も溜息をついた。しかし、館の裏の薔薇園につけば、落ち込んでいた気分も吹き飛んだ。
 そこに咲き誇る、薔薇たちがエリーゼを癒してくれたからだ。
 エリーゼは、うっとりと薔薇たちに見入り、せっせと世話をし始めた。持ってきた苗を移植し、雑草を刈り、肥料を与え、水をたっぷりとかけ、枯れた葉の手入れなどに夢中になる。みるみる間に庭は本来の美しさをとりもどしていた。代わりに満足気に見渡すエリーゼが泥だらけとなった。
 美しい顔は土と汗に塗れ、しなやかだった白い手は固まった泥がこびり付いている。
 スカートは砂埃で汚れ、見るも無残だったが、エリーゼの表情は晴れ晴れとしている。
 溜桶の水を使い何とか見られる様になると、意気揚々と帰宅の途につくことにした。
 上機嫌で、歩いている途中、行きにマクの小母さんに会ったことをエリーゼは思い出した。
 マクは、偶々知り合った村の子供である。よく懐いてくれる男の子で、エリーゼも弟が居ればこんな感じだろうかと思いながら一緒に遊んだ。
 辺りはもう日が暮れかかっていた。
 今日の仕事を終えた人たちが、エリーゼと同じく帰宅の途についている。今から行くとなると、森に帰るのが遅くなってしまう。そうなるとまた婆様の雷が落ちるかな、とちょっと顔を顰めた。どうしようかと迷いつつも、結局ちょっとだけ顔を出す事にした。
 今度会えるのが何時になるのか分からないからだ。
 エリーゼは自分に暗示がかけられていることに気づいていた。だが、あえて何も言わない。何故なら抗議する理由がないからだ。
 それでも、人間の知り合い(その殆どが子供である)と遊ぶ時間は素直に楽しいと思うので、自分の時間を割いてみたくなった。
 マクの家へと向かう為には、ここからだと少し戻らなければならない。決断した後のエリーゼは素早かった。すぐさま向きを変えて道を変更し、どんどん歩いていく。
 マクの家は、村の中でもちょっと離れた場所にあるので、家が見えた頃には辺りは薄暗くなっていた。家の方から子供の楽しげな笑い声がかすかに聞こえてくる。
 それにつられるように顔を上げ、明かりの灯っている家を見て、エリーゼは立ち止まった。躊躇したのだ。
 エリーゼにはあんなふうに、温かな家庭はない。父も母も居ない。
 何故両親が居ないのかと淋しく思うこともある。村で生活している家族の風景を見るたびに羨ましくもなる。けれど、どんなに望んでも手に入らない物なのだ。
 エリーゼは軽く頭を振った。
 村の人たちのような、普通の家族は居ないが、婆様がいる。側に居てくれる妖精たちが居る。第三者から見たら、どんなに歪に見えても、彼女たちがエリーゼの家族なのだ。
 そう考えれば、胸の奥が暖かくなる。エリーゼは、ゆっくりと歩き出した。
 だが、その瞬間を狙ったかのように、近くの茂みから何かが飛び出してきた。
 驚いて声を上げたときには既に遅く、エリーゼは首の後ろをしたたか打たれ、目の前が真っ暗になった。さらに茂みから出てきた人影が、倒れこんだエリーゼに素早く縄にかけた。意識を失い、縛られたエリーゼは人影に荷物のように肩に担がれた。
 その拍子に、エリーゼの頭にのっていた大きな鐔の帽子が、落ちた。
 エリーゼを抱えた人影は、現れた金色の光に、息を呑んだが、直ぐに辺りを警戒して、もう一つの人影と共に茂みの中へと入っていった。やがて馬の嘶きが聞こえ、車輪が地面を擦る音と共に遠ざかっていった。大きな鐔の帽子だけが地面に転り、一部始終を見届けていた。


 真っ暗だ。周りは何も見えない。でも音が聞こえる。これは声?

 エリーゼ エリーゼ こっちだよ、エリーゼ……

 聞こえてくる声にひかれるまま意識をそちらに向ければ、暗かった視界は次第にぼやけて輪郭を持ち始めた。
 地面にぺたりと座り込んだまま小さな女の子は生えかけの若い芽を目を熱心に見ていた。
 長い金の髪を三つ編みにして腰にたらしている女の子が飽きることなくその芽を凝視しているので、辺りを漂っていた妖精たちは興味津々に人間の子供を観察していた。
 この森にやってきた新入りは人間の子供で、とても綺麗だった。
 美しいものを愛する妖精たちはこの子供が好きだった。とくに黄金よりも輝きを放つ髪と紅玉よりも濃い深紅の瞳を気に入っていた。  この森の中では時間の概念があいまいなので、妖精たちは好きなだけ子供を観察したし、子供も地中から出てきた小さな命を見ていたが、唐突に子供の影からするりと何かが立ち上ってきた。
 するすると人の形を作り上げた影は背の低い老婆の姿となって現れた。
 深くかぶったロープの奥から掠れた声が響く。
「いつまでたっても帰ってこないと思ったら、こんなところで何をしてるんだい」
 異様な登場だった。出現した老婆に子供の周りを陣取っていた妖精たちは慌てて散り散りとなって飛んでいく。
 それでも好奇心が勝る妖精の性から遠巻きになって子供と老婆を覗いている。
「聞いているのかいエリーゼ」
 地獄の底から響いてくるような声にも子供怯んだ様子もなかった。自分の影の中から現れた老婆を気にすることもなく、小さな芽から視線をはがさない。
「これはなに?」
 地面に生える芽を凝視したまま子供は鈴が鳴るような軽やかな声を発した。
 老婆は呆れたように子供を見た。
「人の話を聞かないところは親譲りなのかね、まったく…」
 老婆は子供が見ているものを覗き込み鼻を鳴らし、ちろりと妖精たちを睨んだ。
「誰の仕業だい」
 妖精たちは口々に主張した。
「うーん…、バルト」
「そう。バルト」
「バルトだよ」
「ふんっ、あの妖精のやりそうなことだね」
 老婆は子供を見下ろした。
「それは薔薇の芽だ。お前は知ってる筈だよ」
 子供はやっと顔を上げた。
「バラ? お庭に咲いていたお花といっしょ?」
「ああ、成長すると美しい花を咲かせるがね、これはまだ成長する前なのさ」
 子供は紅い双眸を老婆に向けたまま桜色の小さな口を開く。
「でもおかしいの。だってこれはわたしと同じなの」
 黙り込んだ老婆を見上げたまま無邪気に聞いた。
「どうしてわたしとおなじなの? どうしてわたしがここにいるの、、、、、、、、、、、、、、?」
「……どうやらここに連れてきたことで力が強まったようだね」
 老婆は頭を振った。
「いいかいよくお聞きエリーゼ。これはお前じゃない。似ているが違うものなんだよ」
 きょとんとしている子供に言い聞かせるようにゆっくりと話す。
「お前に似ている、、、、が、これはお前じゃない。これはお前の―――…」

 エリーゼ…! 目を覚まして!

 頭の中に大きな声が響いてハッと目を見開いた。
 どんどんと耳鳴りがするが、しばらくしてそれが自分の心臓の音だと気がついた。
 早い呼吸をなんとかして落ち着かせるために目を閉じて、深く息を吸い込んだ。そしてゆっくり吐き出す。それを何度も繰り返した。
 どれくらいそうしていただろう。落ち着きを取り戻すと、周囲の音が耳に届き、ほっとした。
 がやがやと煩い騒音が聞こえてきたが、その音は直ぐ側で聞こえてくるものではないと直ぐに気がついた。壁を挟んだ向こう側から聞こえてくる感じなのだ。
 その騒音は人の行きかう声や、馬の鳴き声、馬車が通るとき特有の車輪の音だった。
 コルスタンではない。
 コルスタンに、こんなに大勢の人はいない。エリーゼは、次第に快復してくる思考でそこまで考えて、疑問に思った。一体ここは何処だろう。
 意識を失う前の状況をエリーゼは何とか覚えていた。何者かに打撃を加えられ、昏倒したのだ。エリーゼは、まずは慌てず騒がず、じっとしていた。
 その上で、自分の現在の状況を整理する。
 両手は前で縛られている(後ろで縛られてなくてよかったと思った、何故なら体制上きついのだ)身体に当たる感触から、石のような床に横たわっているのだと知る。
 硬さからいって、少なくとも寝台なんてものでない。どうせなら柔らかい寝台で寝かせてくれればいいのになんて思う。エリーゼの住んでいる小屋には質素な家具しか置いてないので、柔らかい寝台というものに興味があったのだ。
 目を閉じたまま、自分が居る場所の近くには人の気配がない事を確認する。そこでやっとエリーゼはもう一度目を開けた。
 間違っても、ぱちっとは開けない、ゆっくり、辺りを伺うに瞼を上げる。
 そこは大人が楽に五、六人は入れるだろう大きさの檻だった。
 おやまあ、と思わず呆気に取られてしまった。
 普通の娘なら、悲鳴を上げるかなにか行動を起こすだろうが、エリーゼは生憎とそんなか細い神経は持ち合わせていなかった。直ぐに切れてしまうような神経では、到底あの森では暮らしていけないのだ。明かりが灯っているので、室内を見渡す事が出来た。
 嗅ぎ慣れた土の匂いがすることと、上へと向かっている階段があることから、どうやらここは地下だと推測する。しかし、作りはあまりよくなかった。
 外の騒音が聞こえてくるのだ、人を捕らえておく為の地下としては致命的だと一人で突っ込みを入れていると、複数の人の気配を感じ、エリーゼはすぐさま狸寝入りに徹した。
 エリーゼが、自分自身の身体を伏せると同時に、立て付けが悪いだろう、音を立てて扉が開く音がした。直後に何人かの人間が、階段を下りてきた。
「それで? この前の不良品の変わりは手に入ったのか?」
「はい、勿論ですとも! 上等の娘っ子ですよ。きっとお気に召す筈です」
「どうだかな。どうも君のところの商品には使えないものが多い。こんな事が続けばどこか他の店をあたるが…」
「と、とんでもございません! 先日は私どもの手落ちでしたが、滅多にあることではありませんよ。商業の神、ルーメスに誓って本当です!」
「それを言うならグーハに誓うべきだろう。君は人員売買をしている頭なんだからな。罪業の神に裏の商売が上手くいくように祈ればいい」
「いやはや! これは一本取られましたな」
 そんな会話をしながら降りてくる。エリーゼは、内心「ああ、やっぱり」と思った。
 このグラディウス大陸では大昔、奴隷が公認されていた時代がある。しかし、時代が移り変わり、グリアスではどうか知らないが、現在のヴィルバーンでは人の売買は厳しく取り締まられている。それでも世の裏側ではひっそりと行なわれているものだと養い親から聞いたことがあった。辺境の田舎、薄暗い夜道をふらふら歩いていたエリーゼは、裏商人からして見れば、鴨が葱を背負ってよたよた歩いているように見えたわけだ。
 早い話、裏商人にとっ捕まったのだ。
「……随分と小汚い娘だ」
 檻の近くまで人物が、足を止めた。聞こえてきた独り言にエリーゼは、「ご期待に沿えず、すみません」と嫌味を吐いた。勿論心の中でだ。
「身なりは少し悪いですが、見てください、この上等の金の髪を! 土で汚れていますが顔立ちも整っています。磨けばさぞ美しくなりますよ!」
 熱心に売り込む商人に、エリーゼを見下ろしていた人物は「ふむ…」と考えこんでいるようだった。
「顔は見られるか? 気絶しているようだが、起こせ。性格も把握したい」
「はい、勿論ですとも!」
 商人は近くに居た下僕に合図した。
「大切な商品だ。丁重に扱えよ」
 下僕は頷くと鍵を取り出し、檻を開けた。身じろぎもせずに狸寝入りをしていたエリーゼは、このまま大人しくしている事にした。下僕がエリーゼの肩を、軽く揺する。
 エリーゼは平然と今起きたというような風体をとり作り、目を開けた。
「大人しくしていれば、手荒な事はしない。出ろ」
 エリーゼは小さく頷いた。下僕に縛られた手を捕まれたまま、檻を出る。
 いまいち身体に力が入らない。ここが何処だか分からないが一体何日眠らされていたのだろう。心の中でため息を零し、足に力を入れて歩く。
 立っていた人物の顔を見て、エリーゼは驚いた。立っていた人物もエリーゼを見て驚いた。二人とも目を見開いてお互いを凝視する。
「私と同じ目…?」
 呟いたエリーゼに相手はますます目を見開いた。
「まさか、見えるのか?」
 独り言のように愕然としたような呟きがもれる。そんな二人の様子に商人は訝しげにしている。
 驚きが過ぎ去ると、その人物は些か気をもんだように商人に向き直った。
「いくらだ」
「は?」
「この娘の値段はいくらだと聞いているんだ」
 商人は早くしろと言わんばかりの無言の圧力に目を白黒させた。
「は、はい。先日の不良品の分を差し引きまして、銀貨十枚ではいかがでしょうか?」
 うろたえながらも、商人魂は衰えていなかったらしい。しかし、その人物はあっさり頷いて懐から袋を取り出すと、なんと十ルツを一括で支払ったのである。
 これにはエリーゼも絶句した。
 ルツ銀貨十枚といえば、コルスタンの農家が二年は優に暮らせる値段だ。
 エリーゼは森の中で暮らしているが、家事を担当しているので金銭には、かなり厳しい。
 一緒に住んでいる育ての親が、値の張る薬草をふんだんに購入するのだ。やりくりが大変なのである。ただでさえ貧乏なのに、と頭を悩ませるのも一度や二度ではない。
 好きな薔薇でさえ、入念に絞り込み、値切りに値切って買うのだ、自然と物惜しみをするようになった。だから目の前で行なわれたやりとりに、エリーゼにしては少々珍しい事に、僅かな時間放心していた。その間に、商人は飛び上がって喜び、手を揉んでエリーゼをその人物に引き渡した。エリーゼは地下から連れ出されて馬車に乗せられた。
 そして我に返ったとき、エリーゼは見知らぬ屋敷の部屋の中で、突っ立っていたのである。


  

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